第15章 構ってほしい長男 おそ松
「結構楽しかったよね。遊園地なんて久しぶりに行ったけど、あんなに楽しめるとは思ってなかったなぁ」
「まぁ一緒に行ったのが俺だからね。俺ってばカリスマレジェンドだから!急で無理なお願いにも100%対応してみせる、出来る長男だからさぁ~」
「うぐっ・・・そ、その節は大変お世話になりまして・・・!」
おそ松が語気を強めて言った、急で無理なお願いとは、一日彼氏をしてほしい、というものだった。
職場の同僚となんやかんやでダブルデートをすることになってしまい、どうしても断ることが出来ず、おそ松にその旨をお願いすることになってしまったのだ。
結果的には、おそ松自身も楽しめたので、WINWINとなったのだが、それはナス子の知るところではなかった。
「別にぃ~?ナス子がどうしてもって言うなら、また彼氏役やってやらんでもないよぉ?楽しくないわけじゃなかったし、タダでマッサージしてもらえるし?」
「・・・なるべくそういう事態にならないよう気をつけるけどっ・・・もし何かあったらお願いしちゃうかも・・・しれやせん・・・!」
「そんな今にも血の涙出そうな形相で言う?」
写真の背景が昼から夕方、夜へと時間が進んで行くと、とある一枚の写真を見て、おそ松がその画面でナス子の手を止めた。
「ん?なに?」
「・・・・・・・・・・・・」
ぐっと眉を寄せ目を細めて、画面の中央ではなく端の方に映りこんでいる二人の人間を凝視する。
おそ松がどこを見たいのか悟ったナス子が、人差し指と親指でその部分をスワイプし拡大すると、そこには人目を憚らずイチャつくカップルが写り込んでいた。
「おそ松・・・アンタよくこんなの見つけたね・・・気づかなかったよ私」
「コレ絶対キスしてるよな?!な!?」
「いやわかんないけど・・・多分?してるんじゃない?」
「かーーー!!夜の遊園地で周りには人もいるのに・・・!少女マンガかよ!?しかもよく見て?!これ制服じゃね?!アオハルかよ?!学生の身分でキスなんてしてんじゃねーよ!羨ましすぎるわ!!」
「散々文句言った後スラリと本音が出たね」
頭を抱え絶叫するおそ松をよそに、ナス子は画面を元のサイズに戻しつつ次の画像へとスライドする。