第104章 【逆ハー:卒業ルート】王道パターン、発動パートⅡ
<一松回想>
あの日は寒くて、雨が沢山降っていた。
俺は傘もなく行く当てもなく、路地裏の段ボールの中に座り、少しでも暖を取ろうと縮こまっていた時の事。
行きゆく人達は俺を見ないフリ、ただ好奇心ての?
そんな目線でチラホラ見るヤツはいたけど誰も声をかけようとはしない。
まぁ声をかけられた所で別に嬉しくも何ともないし、放っておいてくれていいんだけどさ。
「寒い……金もないし、腹も減ったし……もう死のうかな」
俺が死んだところで、誰も悲しまないし世の中に何か変化がある訳でもない。
空腹に限界を感じて目を閉じた時、急に身体に当たっていた雨粒の感触がなくなってすぐ目の前に気配を感じた。
でも、もう面倒臭い。
顔を上げるのも面倒。
「ねぇ、キミ……一人なの?」
女の声が聞こえる。
「…………」
「んー。寝てる? おーい、風邪引きますよ~」
「…………」
人と関わるのももっと面倒臭くて、俺に話しかけてくるコイツをずっと無視し続けた。
「起きないな……」
それでもこの女は俺から離れていかずに、目の前に一緒に屈むとバックの中から何かを取り出すガサガサと言う音が聞こえてくる。
「お腹空いてない? これさ、うちの猫に買ったんだけど食べる?」
「…………」
少し香ばしい香りがして重い頭を上げると、俺にニボシの入った袋を差し出すナス子。
「あ、起きてたんだね。良かった! こんな所に居たら身体壊しちゃうよ」
「………それは貰う。でも、俺に構うなんてアンタも相当変わりモンだね」
「ん? そうかなぁ。えーっと、ごめん、私普段ハンカチとかタオル持ってないからキミを拭いてあげれないんだけど」
言うと、ナス子は着ていた自分の上着を脱いで俺に被せる。