第15章 構ってほしい長男 おそ松
が、すぐ帰ってくることになる。
「お~い、おそ松」
突如頭上から降ってきた声に、おそ松は飛び起きる。
「は!?・・・・・・何だよ、ナス子かよ、ビックリさせんなよぉ」
「ビックリさせるつもりはなかったんだけど・・・ごめんごめん」
現れたのは、松野家六つ子の幼馴染のナスナス子。
近所のマンションで一人暮らしをしており、時折こうして松野家を訪ねてくる。
六つ子とは気の置けない関係である。
「寝ようとしてたとこだったんだけど、何?遊びに来たの?」
予想していなかった来客に、おそ松の眠気は覚めた。
うーん、と伸びをしながら今来たナス子の方に体を向け胡坐をかく。
「あ、それとも俺に会いに来た?丁度良かった~俺スッゲー暇で」
「違います。昨日職場の人に美味しいロールケーキもらったんだけど、一人じゃとても食べきれないからお裾分けに来たの」
おそ松の言葉を遮り、ナス子が呆れた口調でそう言うと、否定されることはわかっていたとでも言うように、小指で耳をほじくりながら特に反論するでもなく会話を続ける。
「あっそう。なに?下に母さんいなかった?」
「ううん、いたよ。だから松代さんにケーキ渡してきた」
「で?なんで二階に?やっぱり俺に会いに」
「違います。あ~・・・・・・いや、違わないのかな・・・」
「へ?」
予想外の返事に、目が丸くなる。
断っておくが、二人は別に特別な関係というわけではない。
あくまでただの幼馴染である。
「松代さんにね、上でおそ松がゴネてるから、構っていってあげてって言われちゃったから。それで仕方なく」
「仕方なくって何だよっ」
先程のおそ松の叫び声が階下まで聞こえていたのだろう。
「まぁ今日は特に用事もないし、別にいいかって気分だったから」
「へ~そうですかぁ~」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
2人の間に沈黙が流れる。
「とりあえず座れば?」
「うん、お邪魔しま~す」
そう言ってナス子は部屋の中に入ると、ソファに腰をかける。
バッグからスマホを取り出し、ポチポチといじり始める。