第103章 【リク作品】【逆ハ卒業ルート】六つ子と私:(過去編)あの頃
多少なりとも性格に違いはあっても見た目はまんま同じだし。
だから私に誰が水をかけてきたとか、今私の腕を引っ張っているコイツが誰だとか、見分けががつかない。
ので、私はつい、いつもの松代さんの癖がうつって同じ人物の名前を叫んでしまう。
「やめてよおそ松!! 急に入ると心臓に悪いって書いてあるから、準備体操はちゃんとしなきゃ」
手を引っ張る六つ子の一人を睨んで文句を言うと、ニヤリと笑った口元で、いつものように決まった台詞が返ってきてしまう。
「おそ松はあっち!」
「え、僕おそ松じゃないよ、おそ松はコイツ」
「ざーんねんっ、おそ松はそっちでしたぁ」
えぇい、いつもいつもややこしい。
しかも正解がどれかは言おうとはしない。
混乱していればあっと言う間にプールに連れ込まれる。
「わっぷ! もうっ、好き放題ばっかして!! 誰が誰でももういいわっ」
「全くさぁ、こんなに長く一緒にいるのにまだ見分けつかないのナス子姉さん」
松の誰かが口を開いて呆れるけど、やっぱり誰かはわからない。
それに━━━━━━━━━━
「松代さんだってわかってないし、親でもわからない事が私にわかる訳ないでしょ~」
「「「「「「それもそっか」」」」」」
六人全く同じ顔で見合って、なるほどと手を打つ動作はもうコントなんじゃないかと思ってしまう。
誰が誰でも同じ。
一緒に遊んでれば楽しいし、コイツらだって自分達を見分けて欲しいとは言わない。
何か特別な理由がある時は別だけどね。
スイスイと流れるプールを泳ぎながらまた一人が口を開く。
「そうだ、今週も僕ん家泊まってくんだよね? 夏休みだし宿題教えてよ」