第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
「これを買いたいのさぁ……イカした俺にピッタリのイカしたバイクだろう……?! これに乗っている俺を想像してみてくれ……最高にクールだと思わないか!?」
「却下」
「NO! WHY?!」
「NO! WHY?! じゃないっ! バカ?! バカなの?! これよく見てみなさいよ! ココ! 金額! 一体いくらすると思ってんの?! 170万て! 貸すわけない! てかそんな金ありません!」
バイクというのはピンキリだなぁと頭の片隅でそんなことを思うが、まさかこれを買いたいが為に金を借りに来たと本気で言うのなら本気でバカとしか言いようがない。
もう一度言おう、貸すわけない。倍になって返ってくるとかなら話は別だがむしろ一銭も返って来ない確率が99.9%だ。
「はいっ、ということで! お引き取り下さい! こういうものは自分で頑張ってバイトなりなんなりして買うものだよカラ松!」
「なっ……なんてことを言うんだナス子……! 俺に……働けと言うのか?!」
「なんっでこの世の終わりみたいな反応なんだよ! 普通だからね?!」
「働きたくはない! だがバイクは欲しい……! なんたってこの俺にピッタリだからな……! ああ、エイトシャットアウツ……!」
しゃがみこんで頭を抱えてしまったカラ松に絶対零度の目線を送るナス子。むしろ視線を送っているだけ優しいと思って欲しい。本来ならここは視線さえも贈らず完全無視に徹していい盤面だ。
そうだ、この話はこれ以上絶対に進むことはないのでもう気にしないことにしよう。
ナス子はスマホを取り出しいつものようにいじりはじめる。
「そうだ! いいことを思いついたぞナス子!」
あ、ナス子呼びに戻ったな、諦めたか、と思いスマホから視線を外してカラ松へと移すと、先程まで落ち込んでいた表情が嘘のようにキラキラと輝いた目でこちらを見ていた。