第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
【十四松の場合】
「1532! 1533!! 1534!! ………」
最近、松野家にいると何かと六つ子の誰かに捕まり、結局疲れる事をされるので面倒だが外出をするようになったナス子。
だからと言ってお洒落なお店に興味はなく、どこに行くでもない為、今日は十四松の素振りの見学に来ていた。
「今日も精が出ますなぁ、はぁ草むらの上は何でこんなにも気持ちがいいのか」
近くで素振り中の十四松の声を聞きながらも草むらに大の字で寝転がる。
夜は寒いが昼間は暖かい為眠気を誘う。
「姉さん!」
「んぁっ! いきなりドでかく正面に顔出さないでよ、びっくりした〜」
「素振りしてたら姉さんが見えなくなったから、河で溺れちゃったのかなって」
「あぁ、草むらで姿が見えなかったのか。でもこの時期に河に飛び込むとかないから! 十四松じゃあるまいし」
いきなり目の前に現れる十四松に驚いて起き上がると、隣に休憩とばかりに十四松も座り込む。
「はい、お茶」
「あ! ありがとー………っぷっはー!! んまぁーーーい!」
「運動後だから喉乾いちゃうよね、それに十四松っていっつも口開けてるから余計に喉乾きそう」
「え!? ボクいつも口開けてたっけぇ?」
「うん、空いてる。今も空いてるナウ」
他愛のない会話をしながらまだ口が開きっぱなしで笑う十四松をナス子が指差して笑うと、グッと必死に口を閉じる十四松。
「ふん……ん゛んんん゛」
「え、苦しいの?! 口閉じると死んじゃうとかじゃないよね」
「〜〜〜〜はぁ、慣れない事はするもんじゃないよね」
ついツッコミを入れてしまったが、我慢できなくなった十四松はすぐにいつものように口を開いて笑う。