第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
「ん〜ん〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜っ」
「子供か! 駄々こねてもダメ! 返しなさい!」
「ん〜ん〜〜〜っ」
「チョロ松!」
嫌だ嫌だと首を振り、いつも説教ばかりするチョロ松はここにはいない。
ちょっとした仕返しの気持ちで、本当は貸しで買ってやろうと思ったがほかに客に注目されて恥ずかしい。
「おいいぃぃ、チョロ助ええぇぇぇ」
「ん〜〜〜〜んん〜〜〜ん〜〜っ」
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「はぁ……ホントありがとうねナス子姉さ〜ん! お陰で一生読めないと思った本が手に入ったよ」
あの後、意地でも本を放す事のなかったチョロ松から無理やり本をひっぺがし、注目を浴びていた中でさっさと会計を済ませ店から逃げた。
チョロ松は唖然としたが、ナス子の行動を理解すると満面の笑みで後を追ってきた。
いつも自分が一番しっかりしてるなんて言っておいてコレだ。
ポンコツ六つ子の一人だった事を今になって思い出す。
日頃は自分の方がしっかりしてるだの説教ばかりのチョロ松な為、こんなポンコツは久し振りにみた。
「まったく、かかなくていい恥をかいた。お金は貸し!! だからね?! ちゃんとまた貯めて返してよ?」
「うんうん、わかってるよそんな事ぉ。はぁ、僕の彼女サイッコー」
「ゲンキンなヤツ……」
ちなみに、チョロ松から後にこの本を借りるのだが、ナス子もこの本にいたく涙してしまい、なんだかんだ言い訳をつけられお金が返金される事はなかったと言う……。
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