第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
「………………」
すると、探していた彼が一冊の本を手に持ち凝視していた。
「チョロ松?」
「うわっ!! あ、あぁ。ナス子か、探してた本は見つかったの?」
「ううん、残念ながら見つからなかったよ、隅から隅まで見たんだけどね」
明らかに落ち込んでいるナス子だが、それよりもチョロ松はナス子よりも持っている本が気になるらしくそれをまだ見つめている。
「何か見つけたの?」
「ああ、この小説さ廃盤になったヤツなんだよね。読みたいなって思ってたんだけどまさかこんな所でお目にかかれるとはおどろきだよ」
「へぇ? 廃盤って言ったらもう買うしかないよね、もう何処でお目にかかれるかわかんないし!!」
「うん……」
「ふっふっふ、この店に寄ろうと言った私に感謝するがいいチョロちゃ〜ん」
「……うん」
ニヤニヤとチョロ松を見上げるナス子に感謝したような顔は見せず、チョロ松はまだ本を見ている。
不思議に思いツンツンとチョロ松の背中をつついてみたが、反応はない。
「どうしたのチョロ松?」
「いや、さっきのイベントでさ……全部使っちゃったんだよね。金」
「あ」
そう、先ほどチョロ松が言ったように今日のイベントの為に貯蓄されていたお金はそのままイベントで全て使ってしまった。
が、故に今のチョロ松は無一文なのだ。