第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
「そうだ、私さ古本屋行きたいんだけど」
「はぁ? お前まだ買う気?! これ以上荷物持てないぞ」
「ちょっとだけ!! ちょーーーーっっとだけ! おねがぁい、チョロちゃ〜〜〜ん」
紙袋をブンブンと振り回しダダをこねる年上の彼女。
いい歳してやる事が子供である。
「うわっ、何冊入ってると思ってんだよ。当たったら危ないだろうが! 破れたらどうすんだよ!」
「あ、ごめんごめん! さっき買ったサークルさんの昔の漫画が欲しくなっちゃってさぁ、もしあったらそれだけ欲しいなぁと思って」
「…………はぁ、ちょうど通り道だし少しだけだよ? なかったら他の物は買わずにすぐ帰る!! わかった?」
「はーい、先生!!」
・・・
本屋に向かい、ギッシリと並べられた本棚を必死に探す。
背伸びしたり、屈んだり、目を凝らしたりと忙しい。
なんたって薄い本なのだ、一つ一つじっくり探さなければ見つかるものでもない。
ちなみに、ナス子は目的の本棚にいてチョロ松はチョロ松で自分が見たい棚を見に行った。
これが彼の趣味の場所でなければすぐに帰ろうと怒る所だが、この場所ばかりはチョロ松も楽しめる為、文句は言わない。
「……ない。まだ人気出る前の本だもんなぁ」
いくら探せど目的の漫画は見つからない。
少しだけと言ったチョロ松も珍しく急かしに来ないのでゆっくりは探せたが隅から隅まで見ても見落としがないくらいに確認した。
「諦めるか」
ガッカリと肩を落とし人に聞こえないくらいの声で呟くと、ナス子はチョロ松を探し店内をうろつく。