第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
【チョロ松の場合】
二人でイベントの戦利品を抱え、満足そうに会話をしている帰路の事。
「あ〜、買っちゃったよ〜。今日の為にいっぱい金貯めてたのに使い果たしちゃったよねぇ」
「右に同じくたんまり買ってしまった……今日こそは自分で持てる範囲で買おうと思ってたのに、ごめんねまた荷物持たせちゃって」
「別にいいよこのくらい、前の紙袋パンパンで何個もあるヤツに比べれば可愛いモンでしょ」
今日の為に、お金を貯めていたチョロ松は財布は空っぽになったが、顔はすっきりしていて機嫌がいい。
いつも怒られているナス子も、説教なく荷物を持ってもらっている。
勿論、自分も紙袋二つ分は持っているのだが……。
「後で読みっこしようねー?」
「いいよ、お前ってホントに雑食だよね。拘りがないと何でも楽しめていいのかもしれないけどさ」
「ふへへ、人生損はしたくないんでね」
「それくらいで人生損はしないと思うけどな」
言いつつも幸せそうにフニャフニャ笑っているナス子を見てチョロ松も心なしかつられて笑ってしまう。
「チョロ松も今の趣味以外に手を出して見ればいいのにぃ、新しい世界が開けるかもよお〜?」
「いや、これ以上新しい世界を開拓したら破産するし……てか他ってアレだろ? BLとかゲームとか」
以前チョロ松にナス子はBL本を無理やり貸した事がある。
それに自分の漫画の原稿も見られているし抵抗はないようだったが、好きではないらしい。
「うむ、好き嫌いは良くないよぉ? しかも男同士と言えど内容がいいのもあるからね?! チョロ松だって前に無理やり見せた漫画読んで泣きそうになってたじゃん」
「あれは…っ……まぁ、面白くなかったと言えば嘘になるけど、最後にセックスはいらないと思う」
「うーん、そうかなぁ? あの流れからのセックスがまたいいんじゃないか」
サラリと下のネタを言ってしまうあたり女子力に欠けるナス子。
そんな彼女を呆れ目、への字口で見下ろすチョロ松ではあるが、もうこの残念さは慣れっこなのでため息一つだけで我慢した。