第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
「いくら!? いくらで私の平穏は保たれるの?!」
「んー……2千円でいいよぉ」
「それ貸せば出てってくれるのね? 今すぐ退散してくれるのね? どこかへ消えてくれるのね?」
ジロリとおそ松を睨み、仕方なく財布を取り出す……が、それを素早く奪われてしまいポカンとしてしまった。
「……ハッ! 早すぎて一瞬動きが止まってしまった! ちょっと、財布返してよ」
「え〜、だってさぁ彼氏に向かって酷い言い草じゃねぇ?」
「だって邪魔ばっかりするんだもん、それより財布〜!」
取り返そうとして手を伸ばすがいつものように身軽に避けられ高らかに手を上に上げられてまた届かない。
「ちびっこナス子ちゃん、残念だねぇ。もう少し足が長ければ届いたのにぃ、にっひっひ」
「こ、子供みたいな事しないでよ馬鹿っ」
「大人なお兄ちゃんはちゃ〜んとゲーム終わるの待ってただろぉ?」
財布争奪戦が続く中、ニッと歯を見せておそ松がナス子を見下ろす。
残念ながら好きになった相手には違いない。
しかし金は貸したくない、いつも返ってこないしどうせ賭け事に使うことがわかっているからだ。
「いや、あれのどこが大人しく待ってたのかわからないんだけど」
「邪魔しないで見てただろ?」
「邪魔してましたけど?!」
「あっれぇ? おかしいな」
「おかしくないから! ずっと名前呼んでくるし目の前にチラチラ現れるし叩き潰したくなるわっ」
「虫?! 虫扱いなの俺!」
今度は思い切りおそ松の脛を蹴り上げてやると、さすがに痛かったのか持っていた財布を落としその場に蹲る。