第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
そんな視線に気づいた一松は意地悪そうにニヤリと笑うと、低い声で楽しそうにナス子の顔を覗き込んできて、ナス子は一歩後ろに下がってしまった。
「ヤキモチ? それはどっちに妬いてるのかなぁ、ナス子姉さん……ヒヒヒ」
「……」
「 ? なんで下向くの……おーい? 聞こえてますかぁ」
立ったままの一松のズボンを引っ張りナス子は口を尖らせる。
正直な話、どちらにも妬いている。
しかしそんな事、口が裂けても言ってやりたくはない。
黙ったまま一松のズボンを引っ張って意思表示だけでもと試すと、一松はすぐにナス子の気持ちを察して一瞬だけ瞠目した。
部屋の中に入り、畳に胡座をかいてミケ子を膝に乗せて座ると、片方の空いている足側をポンポンと叩きナス子を招く。
「ん、ほぉら。一松さんのココ空いてますよ〜」
「う……うぐぐぐ……」
やられて躊躇ってしまう自分がいたが、ここは素直に一松に近づき隣に正座をするナス子。
「くれば?」
恥ずかしさがこみ上げてきて顔が熱くなってしまう、近づきたいし膝枕してほしいとは思う。
なんだか自分まで猫扱いされているような気分までしてしまう。
フワリと香る一松は猫の匂いがして癒される。
「お、お邪魔……しま、す」
言うだけ言ってまだ戸惑う大きな猫。
じっと彼の膝を見つめたまま動けずにいた。
「遅い」
「あっ」
膝だけ見つめて動かない状態だった彼女の後頭部を引っ張り無理やり膝に乗せると背中に手を置いてポンポンと叩いてくる。
そのリズムもまた心地よくて心臓がトクトクと高鳴るのがわかった。