第101章 【逆ハールート:短編】彼らの場合
膝、柔らかいなぁ、男なのにふわふわだ。
さすが運動してない男子。
羞恥心などはまだ捨てきれないが、勢いで一松の膝に顔を埋めて顔を擦り付けてみると、やはりビックリした一松は一瞬だけ両手が上がったが、すぐに彼女の頭を撫でてやった。
「……最近忙しくて疲れてたから癒されるなぁ」
「あぁ、そう。お疲れ様」
「ありがとっ」
暫く膝枕が続き静かな雰囲気が部屋に流れる。
この時間がまだまだ続けばいいのになんて思ってしまう ナス子と一松は呑気に部屋で寛いでいた。
「………ところで……さ。お願いがあるんだけど」
「ん、なになに? 一松もお姉ちゃんに甘えたいのかなぁ? んー?」
「ちがっ、いや。違わないけど今は違うんだよね……ナス子ねえさん」
ナス子姉さん。
それは、六つ子特有のある合図である。ナス子はすぐにピンときた。
「……金か」
「…………………正解。ミケ子のオヤツだけじゃなくて、野良猫に餌をあげたいんだけど、か、金がなくて」
「うーむ」
多少言いづらそうな一松は膝で横になるナス子に手を重ねる。
「……ダメだよね、こんなクソでどうしようもない燃えないゴミで息をしているのも許されないだろう俺がこんなおねだりをするなんて。ごめん、忘れて……」
なんて言われてしまうと、彼氏と弟に見えるポジションには心底弱いナス子。
ふぅっと息を吐き、立ち上がって財布を取り出す。
「余計なものは買わないってわかってるし、いいよ。困っている猫は助けるべきだぜぇ、一松ぅ」
「そのさ、クソ松みたいな言い回しやめて。うっかり殺意が芽生えるから」
「ああ、ごめん。カラ松の口調って何でかうつりやすいんだよなぁ」
「頼むからそこだけは治して、マジで」