第100章 【リク作品】【R18】触らぬ神に……(2.3男)
これには大いに文句を言ってやりたい。
やりたい、が……さっき言った通り、二人と旅行に来れたのは素直に嬉しい。
普段出不精で、みんなと会うと言ったらお互いの家がほとんどで、たまに出かけたとしても徒歩で近所の公園などをうろつくくらいだ。
「もう来てしまったんだ、ズル休みをしてしまったことをずっと考えていても仕方がない。ここは開き直って、いっそ思い切り楽しんでしまった方がいいと思うが? 俺も、ナス子と久しぶりに旅行に来れて嬉しい」
「……カラ松…………うん、そうだね、もう来ちゃったしね」
今日のカラ松は珍しくまともだ。
朝からまだイタイ事を言っていない。
すでに旅行先ということで、テンションが上がりたがっているのは自覚している。
だが、どうしてもズル休みをして遊びに来ているという罪悪感が、浮つく気分を抑え込もうとしてしまう。
そんな葛藤がどうやら朝からずっと出ていたらしい。
不意にカラ松の手がポンと頭に乗り、少し乱暴に撫でられる。
恐らくカラ松自身もチョロ松の圧に押されぼーっとしていたのだろう。
素のカラ松はこう言っては何だが六つ子の中で至って一番普通だ。
カラ松の言う通り、せっかくの旅行だ。
もう戻れないのだし、それなら開き直って楽しんだ方が得というものだ。
なんなら自分は悪くない、私を休ませたチョロ松が悪いんだ、そうだチョロ松のせいだ、と自分に言い聞かせなんとか心を納得させた。
「さぁ! そうと決まったらチョロ松を追いかけようじゃないか。きっと俺達を待っているぞ」
「うん、そうだね……って、あの、カ、カカ、カラ松っ、て、て手がっ……!」
「? 何を今更、手を繋ぐくらいでそんなに照れることないだろう、おかしなハニーだぜぇ」
「あ、なんか急に平気になったわ、アリガト。行こう!」
「え……?」
手は繋いだまま、ナス子がカラ松を引っ張る形とはなったが、二人はチョロ松が待っているであろうホテルの入り口へと足早に向かったのであった。