第98章 【十四松ルート】元気を分けてあげる
「ん、わかんないけど急に怖くなる時があるの。行かなきゃいけない、頑張らなきゃって思うのに……上手く笑えなくって、足が拒否して……この前も何日か休んでしまった、最低だ私。迷惑までかけちゃって」
この姉さんの反応は昔に似ている。
男性不信、恐怖症になって……いづれ対人関係すらも恐怖を感じるようになってしまった姉。
一番目立ってたのは男性不信だったからそこばっかり目がいってたけど、姉さんにとっては世の中全てが怖くなってしまう時があるらしい。
仕事に関してはわからないけど、きっと無理な笑顔を作って頑張ろうと思って潰れたんだろう。
車で言うなら姉さんは多分、軽トラック。
勢いは最初だけあって、だけど途端燃料が切れると止まってしまう。
玩具で言えば電池切れとでも言うのかなぁ。
「私が……悪いって、わかってるの。気持ちの問題だし、こんな事で気を落としたりめげてしまって。もっと頑張ってる人は沢山いるのに、なのに自分ばっかりこんな風になってしまって」
「姉さん」
「でもダメなんだ、行こう、行こう。頑張ろう。頑張ろう、失敗しないように、誰にも嫌われないように……すればする程、心がどよんと黒く染まっていって……仲のいい職場の人達にさえ不信感を抱かせてしまって」
あー、今日の姉さんはいつも以上にアレになってしまっている。
これはトラウマと言うか、病気がまた思い出されてるのかもしれない。
要するに、姉さんはパンク寸前。
姉さんの額に軽くキスをして、顔を放して瞳を見つめる。
ハラハラと落ちる涙を余った袖で拭いて顔を覗き込む。
「今、辛い?」
「辛い」
「それなら仕事なんて……」
と、ここまで出かかったけど、多分そういう事じゃないんだ。
確かに姉さんには休養が必要かもしれないけど、誰かを信じるのが怖いんだ。