第98章 【十四松ルート】元気を分けてあげる
「っ……うっ、うっ……」
「あぁ……ね、姉さん……どうしたの?」
最近の姉さんは元気がない。
こうやってボクが遊びに来ても急に泣き出してしまう事がある。
ボクが姉さんをずっとずっと笑わせてあげたいって気持ちがあるのに、それが上手く出来ないのがもどかしい。
どうしたの?って聞いても、首を振るだけでボクはただ隣に座って彼女を抱き寄せて頭を撫でてあげる事しか出来ない。
姉さんも皆も、ボクは元気で破天荒、何をしだすかわからない十四松と言うジャンルだといつも言っている。
でもね、ボクだって普通な所もあるんだよ。
こうやって大事な人が泣いてると悲しいし、出来る事なら幸せに笑って欲しい。
ボクにそれが出来るなら一番願ってもない事なんだけどね。
「ふっ、うう~………」
「姉さん、大丈夫だよ。ボクがずっと一緒にいるよ」
ボクに抱き付く姉さんは震えていて一向に涙を流し続ける。
真意はわからないけど、姉さんの事だ。
きっと何かが爆発したのかもしれない。
「姉さん、ボクね。泣いてる姉さんの役に立てないのは嫌だな。ボクに何が出来るのかはわからないけどさ、教えて欲しいな? ね?」
いつもより馬鹿っぽく笑わないようにして、軽く手の中で泣きじゃくる姉さんを微笑んで宥める。
泣いていた姉さんは涙を流したまま、ボクの顔を見上げて、また胸に顔を埋めてしまう。
「っごめ、最近こんなんばっかで……折角休みの日に会えるのに嫌だよねこんな彼女」
「あははぁ、もう何年幼馴染やってると思ってるのぉ? それに今は姉さ……ナス子はボクの彼女でしょ?」
「う、うん……」
ギュっと胸元の服を握られると、まだカタカタと震えている手がわかる。
「もう、仕事……行きたくない」
「……仕事? 仕事でなにかあったの?」
「………………ない、でも、怖い。行くのが怖い」
「………何もないのに怖いの?」
そういう姉さんの気持ちは多少わからなくもない。
だってボクだってニートだもん。