第92章 【チョロ松ルート】ネガティブ女子
誰だってさ、彼女が落ち込んで泣きそうになってたら心配になるでしょ。
言葉がキツイのはもう付き合いの長さもあるししょうがないよね。
「いい? ナス子、普通は女から男に……どんなに年上だとしても自分からベタベタくっついたり大好きとか言うものじゃないから。悪いのはお前も悪いんだよ、ほんと。でもそこはもう割り切らないと」
「チョロ松……」
「もうトラウマが出てるなら、それは嫌って事なんだから。また同じ事されたらもっと怖くなるし、仕事だって支障が出るんじゃない?」
「………うん」
僕が思っている以上に、ナス子は悩んでいたらしい。
何度もキツイ言葉で言ってしまった僕が悪いのか、それとも本人の罪悪感が押し寄せてるのか、机に大粒の涙が零れているのが見えた。
「ごめん、こんな話を……急にしちゃって、チョロ松が聞いたらきっと不快にさせるかなって思ってた癖に、やっぱり最後はチョロ松に甘えて相談しちゃうんだよね、ほんとごめん」
「はぁ、あのなぁ~。何度も言うけど俺はお前の彼氏! わかる? そこわかってる? 悩みを打ち明けるなんて悪い事じゃないでしょ、不快な思いはない事はないけど、それ以上にナス子の方が辛い気持ちを抱えてるんだから」
ナス子の涙は止まる事はなく、ついにはタオルで顔を覆ってしまう。
こういう時ってどうすればいいかって未だにわからないあたり、元童貞だよね、僕も。
「距離感がわかんないんだよね、この人は大丈夫って思っちゃうと懐いてしまうと言うか」
「だから! そこがお前の悪いとこ!! わかる?! それ、職場だけじゃないからね、他の男にもそうだからっ」
頭に浮かんだのはあのどうしようもない兄弟達。
もっと危機感を持って接しろっていっつも言ってるけどナス子は聞く事はない。
それはアイツらは大丈夫だって思ってるからなんだけど。
そこはまぁ、僕の許容範囲内にあるから守る事が出来る訳で、職場に関しては僕は何もできないから、本人がなんとかするしか他ならない。
「ん」
「え、なにチョロ松」
「……………こっち来れば?」
こんな会話のやりとりで急に飴と鞭みたいな対応かもしれないけど、弱ってるナス子ってナス子らしくないんだよなぁ。