第86章 【逆ハー卒業ルート:微エロ有り】プロポーズ大作戦
「っギャーーーーーーー!!」
と、今からまさにセクハラまがいのことをしようとしていた矢先、半開きの目と目があい、驚きすぎて思いっきり後ろへと後ずさりして襖に頭を打ち付けてしまう。
「っい、だー……っい、一松っ……起きてたの?!」
「いや? 寝てたよ……今起きたんだけど……」
「なぁ~にしようとしてたのかなぁ~? ナス子ちゃんはぁ~」
「っおそ松……!」
背後から腕を伸ばされ、肩を抱きすくめられてまた驚く。
「ちょ、背後は襖のはずなのにどうやって後ろに回りこんだの?! マジシャンかアンタは!」
「そういう細かいこと気にするの俺嫌ーい。でぇ? なにしてたの?」
「っ……べ、べつに」
言えるわけがない。
寝込みを襲おうとしていた、などと。
いや、ここはいっそ素直に言ってしまったほうがいいのか、と脳を回転させていると、脳だけではなく物理的に身体が回転した。
「ん?」
背後にいたおそ松に身体の向きを変えられ、至近距離で目をじっと見つめられ思わず竦んでしまう。
「な、なに?」
「………おかえりぃ、ナス子。今日もお疲れさんっ」
「おかえり……クソ……30分ぐらい前までは起きてたのに……いつの間にか寝ちゃってた」
「……うへへ……ただいま」
寝てしまっていたとしても、待っていてくれたという事実と、その気持ちだけで十分すぎるほど嬉しい。
自分の仕事の時間が夜中型というのは理解しているし、みんな寝ていてもまったく構わないのだが、やはり嬉しいものは嬉しいので、待っていたいと言ってくれているみんなの気持ちに甘えてしまっているのもわかっているが。
目の前でしまりのない顔をしているおそ松に、不意打ちのようにちょんと触れるだけのキスをされ面食らう。
「ちょっと……一松もいるのに」
「そうよ、俺もいるのに……俺もしたいでしょ」
「え? そうじゃなくてっぐえっ」
一松に首をぐいっと引っ張られ、唇を重ねられる。
それも軽いもので、少し触れるだけで温かさは離れていき、首の痛さだけが残る。