第13章 レンタル彼氏、俺 おそ松side
悪戯に笑ってる俺を見てまたナス子は挙動不審。
だからなんだよそのしおらしい感じ。
いつものキモイ生意気なお前を出せよ、調子狂うって!
あ、カップルごっこ続けるとか言いながら俺も何言ってんだ。
「じゃぁ、行こうか」
「え?」
カップルって言ったらまずこれじゃね?
手を繋ぐ。
「えぇー!ちょっと恥ずかしいんですけど?!」
「昔はよく繋いだろー?」
問答無用でナス子の手を握り立たせる。
思ったより手ぇ小さいな。肉の厚みはあるけど。
「お前手ぇ、冷たっ!こんなんでマッサージの仕事とかしてんの?!お客さんに逃げられちゃうよぉ?」
「ちゃんと施術前には手を温めてますー!だんだん温まってくるからいいの」
どうやら観念したらしい、俺に普通に手を繋がれても大人しくしている。
いいじゃん、カップルっぽいじゃーんこれ。
「・・・おそ松は相変わらず手ぇあったかいねー」
言うと、握る手にギュっと力を入れてきた。
軽く締め付ける手が気持ちいい。
俺の手と、コイツの手でちょうどいい体温になってく気がする。
「あ、折角だし手ぇ繋いでるだけじゃなくってさー」
俺は今度は彼女が出来たらいつかやってみたいと思っていた事を実行する。
「こっちのがカップルぽくね?」
指を絡めて手を繋ぎ直す。
おー、これぞまさに恋人って感じじゃん!俺今ちゃんと彼氏やってるぅ~。
「~~~~っ」
あ、コイツ照れたな。盛大に照れやがった。
だって顔赤いし、手に汗かきだしたし。
わっかりやすいなぁ、こういう所はいつも・・・。
俺に照れるとか普段全くないけどなー、でも俺にはわかっちゃうんだよなぁ、お兄ちゃんとお姉ちゃんだから。
さすがにカップル繋ぎには耐え切れなかったようで、ナス子が俺から手を放そうとする。
いくら力強いからってムダだよ~?男の俺には適う訳ないでしょ~?
「いーから、このままでいろって」
「恥ずかしい」
「今更、今更」
空いた片手で顔を隠す俺の彼女。カッコ今日限定。
思ってたよりもわりかし、いい気分だ。