第13章 レンタル彼氏、俺 おそ松side
俺が顔を下から覗くとナス子は動きが止まった。
「あ、なんだよその顔?」
ん?いつもならもっと文句言って反論してくるのに。
なんだよコイツ、おかしくね?まさかホントにゲロるつもりじゃ・・・。
「あ、ごめん。なんかいつもと違うおそ松に見えちゃって調子狂うっていうか」
よくわかんないけど口を尖らせるナス子、普段からこの動作全く可愛さないとか最底辺だなぁ、と思ってるのに満更でもない気もする。
「はぁ?何言っちゃってんのお前、なんか変!」
「いや、変なのはおそ松でしょ?!」
俺がいつ変になったんだよ・・・俺はいつもの俺よー?
違うとこって言ったらただ服装が・・・え、コイツもしかして・・・
「ナス子、まさかお前」
「!」
俺はある言葉を言おうとしたが、余計にお互いの調子が狂いそうだったから適当に取り繕う事にした。
「うんこだろ」
「はぁああ?」
だっておかしいだろ、俺ら今日カップルって言ってもさ、ちょっと見た目や服装が違うだけでこんなに変わるもんか?
コイツ絶対俺の服装に照れてるだろ。
俺ってそんなにカッコイイ?カッコイイけどさ。俺おそ松だし。
「んな訳あるか!ジェットコースター乗っただけでうんこしたくなる程力んではないってのっ」
「んなはははははは、ばっかじゃーん適当に言っただけだってぇ」
あ、また膨れた。
だからその顔調子狂うんだって、やめろよ。いつものお前でいろっての。
見た目が違うからいつものお前になれと言われても仕方ないけどさー・・・
「おそ松これからどうする?彼氏役、ありがとうね!思ったより早かったけど、演技はお終いっ、お疲れ様でしたー!!」
あぁ、そういやそうか。もう友達とも別行動だし俺ら彼氏彼女じゃないのか。
「んー・・・」
鼻を擦りながらも考える。いつもなら多分これでナス子の彼氏役から解放されたと大喜びするんだけどねぇ?
折角こんな所に来たわけだし?俺もコイツもお洒落もしてるし、このまま終わるのってなんかつまんなくね?
「いいよ、続けようぜ。面白いから!」
俺の様子を伺うナス子にニカリと歯を見せて笑う。
中々こういう体験ってないもんな、お互いいつか出来るかもしれない恋人の予行練習って事でいいんじゃね?