第85章 【一松ルート】松野一松の希求
ナス子が、まさしく困ったような表情で、何故かバツが悪そうに俺から目をそらして言ったその言葉に、今度は俺が驚く番だった。
「は……? なに言ってんの? 正気?」
「残念ながら正気も正気ですぅー! なんかさっ、この台詞って大人の女っぽくなくてあんまり言いたくないじゃんっ……て、照れくさいしさっ……!」
少しだけ顔を赤くさせて口を尖らせ、もじもじとそう言うナス子の表情は、とても嘘をついてるようには見えなくて。
俺が黙ってると、ナス子は言葉を続ける。
「だ、だから……一松が死んじゃったら困るよ、私まだ死にたくないし……って、い、一松?! どうしたの?! なんで泣いてるの?!」
「ありがとうございます……」
「なんで突然敬語っ?!」
なんなんだよナス子のこの無駄な優しさ……っ!
神? 神か? 神なのか?!
あれ、ここって天国だったっけ?
ああ、そうかここが楽園か。
よし此処に記念碑を建てよう。
ナス子優しすぎ愛おしすぎ碑をさぁ。
「ねぇ、だからさ、一松、せいぜい長生きしてくださいねーただでさえ私のほうが年上なんだからさ」
「ああ、そういえばそうだっけね……まぁ、約束はできないけど……努力はする」