第85章 【一松ルート】松野一松の希求
例えば。
「ブッブー、駄目です。その返答は間違ってますぅーやり直しっ」
「えぇ……? ふ……わかった……せいぜい長生きしてやりますよ。そういえばこうも言うよね、憎まれっ子世に憚るってさぁ」
俺が死んだとして、困るやつなんかこの世には一人もいないと断言できた。
「そうだそうだー、ニートで闇松で猫松でも私は大好きで必要で大事な人なんだからねっ」
ニートで、根暗で、闇持ってて、すぐケツ出すし実も出そうとするし、クズだしゴミだし、燃えないから処理にだって手間がかかる。
いいとこなし。
自分で言ってて悲しくならないかって?
全然。
だって事実だし……それに。
「ナス子が俺の隣にいる世界なら、200年でも300年でも生きてたいね……」
「え? ごめん、声低すぎ小さすぎで聞こえなかったっ、もっかい……って、なんで目ぇ閉じちゃうのー! 寝るなー! コラっ一松!」
ナス子が、俺がいなくなったら困るって言うから。
恋人はさ、困らせたくないものでしょ?
「愛してるって、言っただけ」
「……え」
例えば、俺が死んだとして。
困るというこの人の為に、これから先は生きていこう。