第85章 【一松ルート】松野一松の希求
――――俺は、俺が好きじゃない。
「私は好き」
――――俺は俺なんか嫌いだね。
「一松が嫌いな一松も、私は好き」
俺がそう言うと、決まってそう返してくれるナス子のその言葉が聞きたくて、わざと口に出したりする、面倒臭い奴。
でも、人間て不思議なもんだよね……誰かに愛されてるって思うと、愛されてる分だけ自分を少しだけ愛せるようになるんだよ。
俺は、俺が嫌いだけど、ナス子のことは――――――
――――――愛してる。
愛した人に愛してもらえた。
それだけで、何度死んでも、何度ひどい殺され方をして死んだとしても、戒めることなんて出来ないと思う。
自分が愛した人が、自分のことを愛してると言ってくれているという、確かな価値は感じることもある。
けど。