第85章 【一松ルート】松野一松の希求
「ごめん……なんか、この家に来ると眠くなるんだよね……安心するっていうか」
「ふひひ、ごめん、全然怒ってないよー。さ、目ぇ覚めたならご飯食べよ? 一松が好きだからちょっとお高い鰹節買ってきたんだ~」
「マジ? 食べよう」
そうして、今日も二人で食事を取る。
こうやって二人きりで食事をするのも、もう何度目になるのか。
ナス子の家に来るのが当たり前になって、一緒にご飯を食べるのが当たり前になって……一緒にいるのが当たり前になってる。
ほら、俺ニートですから、時間の縛りとか基本的にないんだよね。
ニートはニートなりに生活のリズムってもんがあるにはあるけど、それは絶対じゃないし、自分がいいって思えばいいんだから、縛りなんてないに等しいわけ。
こういう関係になってから、ナス子も一人暮らしってこともあって、こっちにいる時間がどんどん増えてる。
この間なんて、実家に帰ったら皆梨食ってて、俺の分なかったからね……許せないよね。
まぁすぐ踵を返してしこたま梨買ってナス子と二人でしこたま食べたんだけどさ。
「ごちそうさま……ヤバイ、鰹節と醤油だけで飯何杯もいける」
「ホントだね~! やっぱり高級なのは風味が違うっていうか、香りが豊かっていうか……! お米三合炊いたのにもうちょっとしか残ってないや」
「おかずいらないね」
「むむっ、でも美味しかったでしょ、今日の肉じゃがは自信作っ」
「……うまかったよ……80点くらいかな」
「先週より10点も上がったっ! 松代さんの味までもう一息かっ……」
別に、俺は母さんの味じゃなくても全然いいんだけど、なんか目指してるみたいだから付き合ってやることにした。
普通さ、一生懸命作った料理に点数つけられたらムカつかない?
俺だったらムカつくね……ああ、味の感想は正直に言うけど。
そうして食事を終えたあと、ただゴロゴロして、ごろごろして、ごろごろする。
実家にいようが恋人の家にいようがようはやることはないし、やることといったら息するくらいだから変わらないんだけど。