第85章 【一松ルート】松野一松の希求
「―――――まつ……いち……つ………一松」
「……ん? あー………ナス子……」
「どうしたの? 嫌な夢でも見た?」
「え? なんで……? 嫌な……むしろ良い夢だった気がするんだけど……」
「そうなの? それじゃ起こして悪いことしちゃったかな、でも………泣いてたから」
「は?」
そう言われて目を擦ると、確かに涙が出ていて、慌てて顔をふき取る。
夢見て泣くとか子供かよ……いや、子供でも今時泣いたり
しないよな……赤ちゃん? 赤ちゃんか俺は……!
「お、おお俺……なんか言ってた……?」
「え? ううん、寝言は何も……どんな夢見てたの?」
「え、ど、どんなって……あれ……どんな夢だったっけ……」
二人して首を傾げて、その動きが妙にあってたもんだから思わず笑ってしまった。
「あはは、夢って覚めた途端に忘れちゃったりするよねぇ、あるある~あ、ご飯出来たから呼びに来たんだった」
「俺ミケ子と遊んでたら寝ちゃったんだっけ……?」
「そうだよー、恋人の私をほっぽってねっ」
そう、この本気で怒ってなんかないくせにむくれた顔をしているのが俺の恋人、ナスナス子。
そう、聞き間違いじゃないからね。
俺の、松野一松の恋人。
この俺に、恋人とかいうやつが出来ちゃったわけなんですよ。
信じられる? 俺だよ? 松野一松。
自分で言うのもなんだけど、変態だよね……こんな俺を恋人にするなんてさ。
あ、そっちかって? そう……でもそう思うでしょ。
俺自身、まさか俺が選ばれるなんて夢にも……いや、夢にぐらいは見てたかもしれないけど、まさか本当にそうなるなんて思ってなかったからね。