第82章 【逆ハー卒業ルート】なんという事態…! カラ松&トド松
「多分すぐに復旧するとは思うけど、なんだか、たまにはこういうのもいいかなぁなんて不謹慎なこと思っちゃった」
「じ、実は私も……これって台風の時とかに海や川を見に行きたくなる心理と似てるのかな」
外では相変わらず雷と暴風雨が渦を巻いていて、文字通りの大荒れの天気となっていた。
三人でコーヒーを飲みながら、なんとなく全員の視線が窓の外へと注がれる。
「これはしばらく治まりそうにないな」
「ナス子姉が珍しく徒歩で買い物なんか行ったからじゃない?」
「なにをう! そ、そこまで珍しく……ないしっ」
トド松の言葉に口を尖らすが、あながち否定が出来ないので語尾が詰まったのは言うまでもない。
「そういえば、どうして急に徒歩で買い物になんて行ったんだ?」
「えっ? た、たまには歩いていこうかなぁって思って」
「……なーんか怪しいんだよねぇ……ナス子姉、他になんか理由あるでしょ」
「は?! べ、べべべべ別にっないしっ! ないしっ! 最近あの、あれで、あれだ、運動不足だなぁ~って思ったからっ」
「……………」
怪訝な目でトド松に見つめられ、居心地の悪さになんとなく目を逸らす。
カラ松は頭にはてなマークを浮かべたままキョトンとしつつ手に持ったコーヒーを啜っているのだが、別段トド松を止めてくれる気配はない。
「……まっ、別にいいけど? ナス子姉にも言いたくないことの一つや二つや三つや四つあるだろうしぃ」
「そんなにないからっ!」
と、ナス子が叫んだタイミングで、見計らったかのように何度目かの落雷が起き、ビリビリと細かな振動が伝わったのがわかる。
どんどん暗くなっていく中、やはり懐中電灯だけでは心許ない。
「あ、あー! そういえば、前にもらったアロマキャンドルかなんかがあるかもっ! ちょっと見てくるね」
「明かりはあればあるほど助かる。あ、懐中電灯使うか? よく見えないだろう」
「まだなんとか大丈夫だよ、ありがと、待ってて」
久々の話になるかもしれないが、ナス子の部屋には物が多い。
今でこそ、カラ松が掃除や片づけをしてくれている為こざっぱりとしているが、その前は床にも棚にも物が溢れて足の踏み場がないこともしょっちゅうだった。