第82章 【逆ハー卒業ルート】なんという事態…! カラ松&トド松
「家までまだ大分あるけど……頑張るしかないかぁ……はぁ……」
わかってはいるのだが、どうしても重い腰と重い荷物が持ち上がらない。
重力に従順な荷物は、ビニールが指に食い込み容赦なく血管の巡りを悪くしてくる。
空を見上げていた頭は、同じく重量に逆らえなくなったかのように項垂れ、発言とは裏腹に地面をじっと見つめたまま。
すると、そこにまさしく天の助けとも言える声がかかる。
「やっぱりナス子姉だ。なにしてんの、こんなところで」
「一人で買い物か? フフーン、ビンゴぉ……? あー……す、すごい荷物だな」
聴き慣れた声に弾かれたように顔を上げると、そこには松野家の次男カラ松と、末弟トド松が並んで立っていた。
「うわっ、ホントだ……何これ、何をこんなに買い込んだの?! ていうか車は?!」
ナス子の足元に置かれたビニール袋の中身を覗き、重い物ばかりの消耗品を見るや否や、トド松が驚いてナス子に向き合うと、キラキラと眩い光線を瞳から放つナス子の姿がそこにはあった。
「トド松っ……カラ松っ……! 天の助けぇぇぇぇぇぇ!!」
「うわっ! ちょ、ちょっとナス子! ここ街中だから! 落ち着いて!」
「OH……人目を憚らない熱い抱擁とは……っふ、照れるぜ……」
思わず目の前の二人に泣きつき、腕を回して強く抱き締める。
誰が見ていようが構わない、今、この現状を打破する最高のシチュエーションをくれた神様に全力で感謝したい気分だった。
困惑しているような迷惑しているような微妙な表情を浮かべた二人の腕をガシリと掴み、大きく一言。
「荷物持って!!」
「「 ですよねっ!! 」」
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