第82章 【逆ハー卒業ルート】なんという事態…! カラ松&トド松
「こ……これは……っ」
それは、青天の霹靂……とは、少し大袈裟だと思うが、本人にとっては大袈裟ではないとても大きな問題であり、けして見過ごすことは出来ない出来事なのであった。
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その日、ナス子は珍しく車ではなく、徒歩で買い物へと出かけていた。
「8265円のお買い上げです。ありがとうございましたー」
「……ちょっと買いすぎちゃったかな……いやっ、でもシャンプーとか洗剤とかは置いておけるし、安かったからまとめ買いしてでも頑張って持って帰りなさいっていう神様の啓示に違いないわ……に、しても……重っ……!」
必要な物だけ買うつもりが、偶然開催していたセールにより最大7割引きとなっていた消耗品を思わずまとめ買いしてしまった。
それはシャンプーだったり、トリートメントだったり、化粧水やら洗顔やらに始まり、洗濯洗剤、食器洗剤等々……一つ買うだけでも重量を増やす買い物であり、それを買い込んだ合計の重量に、両肩と両手が悲鳴を上げていた。
「やっぱり……っ車で来ればよかった……なんで歩いて来た日に限ってセールなんてしてるのっ……はぁ……はぁ……ヤバイ、手が痛いっ」
座れそうな垣根に寄り、買い物袋を地面に置いて垣根に腰を下ろす。
行き交う人々がその荷物の量にチラチラとこちらに視線を向けるが、今はそれもさほど気にならない。
ナス子にとって手は商売道具であり、こんなことで痛めたりしてよい場所ではないことは本人も重々承知なのだが、自分の力を過信して買いすぎてしまったことには後悔していた。
「そうか……買い物自体もカートを使うんじゃなくて、カゴを手で持って買い物すればよかったんだよ……! そうすれば重たくなったら あ、コレ以上無理だな ってわかったのに……!」
だが、後の悔先に立たず。後の祭り。
せっかく買った物を返品するのも気が引けるし、そもそもここまで運んで来た物をまた引き返すのも億劫だった。
なんともなしに空を見上げると、嫌な雲がどんよりと広がりつつある。
そういえば、午後から雨になるとの天気予報だった。
ぐずぐずしていたら、重い荷物を引きずり雨に濡れ……と最悪の展開になること間違いない。