第81章 【十四松ルート】ステイ
「我慢なんてしないで? 私は、十四松に沢山愛してもらいたい、んだ、よ……」
「どもっちゃう所が姉さんだよねぇ……でも、その前に~」
「ん?」
十四松は一度ナス子から手を離しテーブルから降りてクローゼットに視線を向ける。
「一松兄さん、もう大丈夫だよ!!」
急に名前を呼ばれ、一松がガタガタと動揺から身を動かしクローゼットの中から音を鳴らす。
隠れていたのにも関わらず最初から気づかれていたのかと身体をビクつかせている一松は名を呼ばれてもそこから出る事はせず無視を決め込んだ。
「一松兄さん? 出てきて大丈夫だよ! じゃないとボクら何も出来ないよぉ」
クローゼットの前に行った十四松がその扉を開けると所狭しと身を屈めた気まずそうな一松と目が合った。
しかし十四松の表情は全く怒っている訳でなく逆にスッキリした笑顔だ。
「じゅ、十四松……」
「へへへ、ボクと姉さんの事を心配して来てくれたんでしょぉ? 兄さんもすっごく優しいからわかるよ!」
「………べ、別に、俺はただミケ子に会いにきただけで」
ブツブツと言い訳を述べる一松がナス子の目に入るとポカンとしてしまう。
まさかさっきまでの会話を聞かれているとは思わずボンっと言う音を立てるかのように耳まで真っ赤になってしまった。
「……っ!! か、帰ったんじゃなかったのぉ?!」
「……いや、帰りたかったんだけどタイミングを見失ったって言うか」
「~~~~っ!! もうっ、いるならいるって言ってよ!!」
文句を言われたが、あの状況で俺居ますよなんて言える訳ないだろうがと心の中で悪態をつく一松。
しかもクローゼットの中で二人がいい雰囲気になっている事を目の当たりにされ心配していたのに若干気分は悪い。
仲直り?出来て良かったね。
そうとも思うが、素直にその言葉は出てこない。
「お邪魔虫は退散しますよ、後は二人でしっぽりと楽しめばいいでしょ……ひひ」
「しっぽりって言うなしっぽりって!」
「うん!! いっぱい、しっぽりしマッスル!!」
「おいいい、十四松! そこはハッキリ言わないで?! お姉ちゃん恥ずかしいからっ」
こっちに手をしっしと払うように一松はわざと吐く真似をすると玄関に向かいサンダルを履く。