第81章 【十四松ルート】ステイ
「疲れてる……けど」
「えー?! や、やっぱりボクがいっぱい姉さんを求めちゃうから」
「そ、それはね? 仕事の事で疲れてて十四松の所為じゃないんだよ……ま、まぁ、体力的には削られますが……でも私だって十四松を感じたいって言うか…ああぁあ、恥ずかしいぃぃい」
言ったナス子は真っ赤になったまま両手で顔を隠してしまう。
暗闇の中の四男は心底ご馳走様です、吐きそうですな状態だが出るに出れずこの二人のイチャイチャを聞いていなければならないとこの地獄のような時間を耐えるしかなかった。
意を決した十四松は両手を人差し指で弄ぶように視線を落としながらも聞きたい事を聞いていく。
「あのね、姉さん。ボク、姉さんが好きで大好きで……この気持ちは愛しい気持ちなんだってハッキリ言える! けど、姉さんの気持ち、いつもボクはちゃんと聞いてなかったなって思って確認しに来たんだ」
「十四松」
指遊びをする可愛い年下の恋人を見つめ心臓がキュゥと締め付けられる感覚に襲われる。
今すぐにでもその身体を抱きしめ羽交い絞めにしたい衝動が邪魔をしているが、ここは真剣な話し合いの場なのでナス子も我慢する。
「私だって、同じだよ? 十四松の事、好きで大好きで、愛……愛……ぬあああああぁ」
突如恥ずかしさからくる台詞にテーブルに額を叩きつける。
その奇行に十四松とクローゼットの人物はビクリとするのだが、普段天邪鬼な彼女の事だ、大好きまでは言えても愛してる、と言う言葉は相当な覚悟がいた。
「姉さん!? 大丈夫? そんなに頭打ったらボクみたいに馬鹿になっちゃうよ!!」
「ここで馬鹿な頭がもっと馬鹿になるって言わない所が十四松のいい所だよね……ふふっ」
「?」
赤いデコをしたナス子が向き直り、十四松に向く。
十四松が聞きたい事は一松から聞いていたため素直にその言葉を口にした。
「私はね、十四松がいないと……その、ダメって言いますか」
「ホント?!」
「私が我儘なのかな、私ズルイかも。十四松は私だけの十四松じゃないのに、もっといっぱい十四松の事知りたいし……じゅっ、十四松の身も心も全部欲しいって思っちゃうって、言う……か」
こちらが質問するよりも早くナス子が十四松と同じ考えを言葉に出すと、嬉しそうにニパリと笑う十四松がそこにいはいた。