第81章 【十四松ルート】ステイ
「一松も、私と同じくらい十四松には甘いよねぇ~、ふへへ」
そんなナス子の呟きなど聞こえる訳もなく、そのまま一松は朝までナス子のマンションの部屋で眠り続けるのだった。
風呂に入り、やる事を済ませてゲームをしながらナス子は隣の部屋へと移動しいつもの布団で眠りについた。
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朝、けたたましい玄関のチャイムの音に一松が目を覚ます。
「ん~……っは! やばい……俺寝ちゃった……?!」
このチャイムの音の慣らし方はどう考えても明らかに十四松だ。
深夜に十四松の事を説明しに来たのはいいが、その恋人の家に朝まで寝ていたと言う事実が一松の心を混乱させる。
「やばい、まじでやばい、殺されるかもしれない……」
弟と幼馴染の事を考えてここに来た訳で何も悪い事はしていないのに、罪悪感が込み上げる一松。
寝起きと言えどその緊張は高まり急いで起き上がり玄関に置いてある自分のサンダルを手にとるとすぐ様近場のクローゼットの中に隠れる。
本当に、何で自分は隠れる必要が……と溜息が出るがこれが普通の幼馴染として泊まっただけならまだいい。
しかし一松もまたナス子に好意を寄せる一人と言う事でいつも自分に優しい十四松もさすがにこれは怒るのではないかと不安を抱えて暗く狭い中で身を縮めた。
「……あ、でもこの空間ちょっと落ち着く」
なんて言ってる場合でもないのだが、新しい落ち着く場所を手に入れた一松であった。
程なくして襖の音がして中から目を擦って大あくびをするナス子がチャイムの音に気づき起きて来る。
「ん? あれ……一松、帰ったのかな?」
床には毛布とその抜け殻があり、触るとまだ温かい。
まだ家に帰ってそう時間は経ってないのかなと思うが、まずはこの早朝に慣らされるチャイムをなんとかしなければ昨日の格闘の件もありさすがに苦情を食らうのではないかと玄関を開けに行く。
見ると玄関に一松のサンダルもなくなっており、首を捻る。
玄関のカギはチェーンはかかってなかったが閉まっている。
寝起きからの思考では何故、どうして一松がどうやって鍵を開けて閉めて出ていったのかと言う思考には至らなかった。