第81章 【十四松ルート】ステイ
━深夜━
ナス子が帰宅すると何故かわからないがマンションの入り口に膝を抱え眠り込む一松の姿がそこにはあった。
「ん? んん?! い、一松……? どうしたの、こんな夜中に! っていうか待ってたの?! 風邪引いちゃうからとりあえず部屋に入りなよっ」
「……ん、お帰り。お仕事お疲れ様でーす」
「どどど、どうも? まさかこんな夜中にミケ子に会いに来たかった、とかじゃないよね?」
「ミケ子には会いたいけど違う。さっきトド松にメッセージ送ったでしょ。その事で話があったからさ」
急いで玄関の扉を開けてナス子は一松を立たせて中に入る。
ミケ子は友人に預かってもらっていたため部屋にはいないので少し残念な一松だが、テーブルに座り温かなお茶を淹れてもらうとホっと息を漏らす。
「制服、久しぶりに見た」
「あぁ、これ? 確かにこんな時間に遊びに来ることなんてないもんねぇ」
「…………」
「なに?」
「いや、似合ってるなと思って」
じっと見つめていた一松が視線を外し珍しく褒める。
一体こんな時間に何をしに来たのかと思ったが、昼間の十四松の口から、一松とトド松の名前が出ていたのもわかっていた為、今日の十四松の挙動について教えに来てくれたのだろう。
「あはは、ありがとう。てかさー! アンタ達、十四松になんか言ったでしょ?」
「そう。俺らちょっと今日十四松に余計な事言っちゃったから……ナス子にも謝らなきゃと思って」
「え?! 謝りに来たの?! こんな時間に? うわ、どうしたの珍しい……」
向かいに座り共にお茶を啜る。
何か彼に吹き込んだとわかっていたナス子だったが、一松がこんな遅く、いつもならグッスリ眠っているであろう時間に来るとは思わず、どんな余計な事を言ってしまったのかとお茶をゴクリと飲む。
「どうせさ、ナス子の事だから今日の十四松の事考えて仕事に手がつかなかったんじゃないかなと思って」
「……うぐ、た、多少はね! でもちゃんと仕事はしてきたよ!」
一松の言う通り、ちゃんと仕事はしたものの途中でどうしても脳裏に過る逃げに逃げる十四松の事が頭から離れなかったナス子。
図星をつかれて多少焦るがこうやって心配してこんな時間にも関わらず訪ねてきてくれた十四松の兄に心の中で感謝する。