第81章 【十四松ルート】ステイ
公園のジャングルジムの上に座り、空を見ている十四松。
既に日も落ちた暗い、曇った空を見るとまるで今の自分のようだなと考えた。
「こんなのボクじゃないよねぇ、でもボクらしいってなんだろぉ。これもボク、いつものボクもボク……でも姉さんはどっちのボクが好きかなぁ?」
ついさっき決めたばかりなのに、今すぐにでも彼女を抱きしめ、いっぱいキスして沢山可愛い姿を見たいと身体が疼く。
ダメだダメだと首を捻ってしまうくらい横に思い切り振ってまた空を見た。
いつも二人でいて、外にいる時は共に空を眺める事が多い。
しかし今日は一人で、夜に曇りと、自分の心を不安にしかさせていってはくれない。
「はぁ、会いたいなぁ。触りたいしキスいっぱいしたいし……姉さん、心配そうな顔してた」
少しだけ会えた恋人とのスキンシップから逃げてしまい、コチラを見ていたナス子を思い出す。
すると自分はやはり間違っているのかとも思うが、その反面負担をこれ以上大きくしたくないと言う心配が過ってしまう。
「ナス子姉さん」
目を瞑りその名を愛おしそうに呟くと膝に顎を乗せて無言になってしまう。
確か明日は彼女の公休日だが遊びに行ってもいいものかと戸惑いが邪魔をする。
「ボクはボクであって、でも今のボクは……うーん」
「それも十四松でしょ」
ふとジャングルジムの下から声が聞こえそこに視線を落とすと、兄の一松がコチラを見上げている。
「そうだよ、十四松兄さんはそういうジャンルなんだし別に悩む事ないから!」
その隣でジャングルジムに背を当て寄りかかる弟のトド松も一緒にいた。
「一松兄さん、トド松? どうしたのぉ、こんな所にきて。あ! 野球?! 野球しにきたの?!」
「違うよ十四松兄さん……えーと、その……なんていうか、ごめん、ね?」
多少謝罪の言葉を躊躇してしまう捻くれ屋のトド松。
口を尖らせ少し間が開いた後、ちゃんと十四松に謝罪をした。
「ん? ごめんってなんの事ぉ?! やきゅうしないから?!」
「俺らが昼間にあんな事言っちゃったから、そのことで悩んでるんでしょ?」
「あぁ」
また、空気の漏れたような声で返事を返す。
でも、決めたのは自分だしそれを言われなかったら自分だって気づけなかっただろう。