第81章 【十四松ルート】ステイ
「んー? 何が悪いの、別に十四松は悪い事なんてしてなくない?」
「いや、一松兄さんとトド松が」
「一松とトド松……? はっ、さてはアイツらが何か変な事を十四松に吹き込んだんじゃないでしょうね?!」
「あー……」
違う、とも言えないし、そう。とも言えない。
だって理由はきっと間違ってはいないだろうから。
「ち、違う!! 二人の事じゃなくってボクの問題!!」
「十四松の?」
追いかけっこからくる気だるさに息を吐きながら壁にもたれかかり腕組みをする。
何故彼が自分からこんなに逃げるのか納得がいかないが、やはり自分が何かしてしまったのだろうか。
彼は違うと言ったが、それでも不安は拭えない。
「…………ねぇ、十四松。私のこと、き……嫌いになったんじゃないよね?!」
「え?! そんな事ないよ、ボク姉さんの事大好きだよ」
「……なら、大人しく……っ!」
「どわっ、だから……いい加減、に……!!」
一瞬ギクリとした十四松の油断をつきまた十四松を手首を狙って手を伸ばすが、今度はその手首を逆に自分が掴まれてしまい壁に固定される。
やっと至近距離で十四松と目が合うのだが、押えられた手首は少し痛く、唖然と目の前の彼の顔を見上げる。
見た所、怒っている訳ではなさそうなのだが、目は泳ぎやってしまったと言う顔をしてその頬は真っ赤に染まっていく。
「どうしたの、ほんと」
「あ」
至近距離から見上げる彼女の顔と唇を見ると、すぐにその口を自分の唇で塞ぎたくなってしまう十四松だったが、頭の中でステイと言う文字を自分の中に必死に唱え喉を鳴らして我慢からくる震えと共にゆっくりと彼女の手首を開放した。
触れると制御が効かず自分の理性が飛んでしまう事もわかっている為、とにかくここは我慢するしかない。
顔を見たかったから来てみたはいいものの、何も出来ないと思うと余計に辛いという事がわかり、グッと十四松は一度口を堅く閉じた後に慌てて言葉を告げる。