第81章 【十四松ルート】ステイ
いつもならコチラが何も言わなくても嫌と言う程くっついてくる十四松。
そんな彼が今、明らかに自分から逃げた事は普段のネガティブ思考から推理出来た。
「べ、別にくっつくくらいじゃそんな汗かかないよ……」
「でもぉ……」
「どうしたのさ十四松、なんか変だよ? いつもの十四松らしくないっていうか」
何があったんだろうと心配になってきて、近寄るのは避けられたので若干怖かったがそれでも頑張って十四松に詰め寄る。
しかし相手はまたズリズリと離れていき、顔だけは真っ赤に染まり下を向いてしまった。
「だ、ダメだよ姉さん。今はボクに近づかない方がいいよ」
「え、なんで?」
「んーと……」
さっきの兄弟の言葉を口にして、もしそれが本当になってしまったらと思う十四松はいつもなら素直になんでも口に出すが、その言葉は口に出せずに困って黙ってしまう。
「んん?」
「近づいちゃダメなの?」
「今はさすがに! さすがにぃ……」
首を捻って考えたが、ナス子は十四松の考えている事はわからず更に首を傾げる。
コチラは大好きな十四松にくっつきたいと思うのに逃げられてしまい、不安が募るばかり。
「……………ぬああ、何なの?! 我慢出来ないんだけどっ!」
「え、ね、姉さん?!」
お茶をテーブルに置いて、十四松が逃げられないよう自分の腕に彼を包み込む。
ほわっとした彼女の香りが十四松の鼻をくすぐり途端十四松自身も我慢しようと思っていた感情が揺らいでしまい、その身体を抱きしめ返そうと手を上げるのだが、一瞬止まり上げられた手は下がってしまった。