第80章 【微エロ】【一松ルート】日向からの目線
もらう側より、あげている側の方が、何故だかよっぽど嬉しそうに見えて、思わず顔が綻ぶ。
「ほら、ミケ子、美味しい鰹節だから、食べてみて……」
「よかったねぇミケ子~! あ、食べたっ、食べたよ一松っ! かんわいいなぁ」
「ミケ子が可愛いのは今に始まったことじゃないから」
さすがは最高級というべきか、部屋中が鰹節の香りになってしまっている気さえする。
二人してデレデレした表情をしていたが、隣同士の二人がふと目線を合わせると、少しの間の後どちらともなく自然と口と口をくっつける。
「ん………な、なんで急にチューすんの……」
「は? ナス子からしてきたんでしょ……」
「え?! そ、そうだった?!」
「……そう……とも限らない、けど………っ痛」
声を上げつつも、手を引っ込めないところはさすがと言ったところか。
掌の上にはまだ鰹節が残っていて、一松は視線を手元に戻す。
「ミケ子……俺の指は食べても美味くないから……」
「あらら、歯が当たっちゃったかな?」
「そうみたい……大丈夫、これぐらいなんともないから……そういえば、俺たちも最初の頃はしゅっちゅう歯が当たってたよね……」
「は……は?! んななな、なにがっ?!」
「わかってるくせに……っ痛……ミケ子……もしかして、機嫌悪い?」
またも指に歯が当たり、一松が少しだけ顔を歪める。
今度は当たったというより、噛まれたという感じを悟ったのか、一松は顔色を窺うように首を傾げた。
━━━━━━━━━ そうよ。
いや、正確には機嫌が悪いわけじゃない。
ただ、なんとなく気に入らないだけ。