第77章 【逆ハー卒業ルート】焼肉パーティ
「………これ……」
ナス子が見つめる先には、見慣れた服。
幾度となく見た、だけど見た事がない服。
「やっぱり姉さんにはその色だよね! ボク、ピッタリだと思うなぁ!」
それは、今みんなが着ているパーカーと、まったく同じ形、オレンジ色のパーカーだった。
「私の?」
「んんー? 他に誰がいると言うんだ? ナス子」
「あ、そ、そっか、そうだよね……っ」
「ねぇねぇ、ナス子姉っ、着てみてよっ」
「えっ?! い、今?!」
未だ透明なフィルムに包まれた服を、結局トド松が開けて中身を渡され、押し付けられる。
「ちょ、ちょっと待って! 焼肉臭いかもしれないしっ、この上から着るのはちょっと……! あ、あっちで着替えてくるからっ」
そう言ってオレンジ色のパーカーを握り締め、玄関側の廊下へと出て襖をピシャリと閉める。
ケーキの味の感想を聞くまでのドキドキとはまた違う鼓動が、耳まで響いてうるさい。
必死に堪えていたが、一人になると途端に顔に血液が逆流してくるのを感じてペチペチと頬を叩く。
どうしよう━━━━━━━━━━━━━……
すごく……すっごく嬉しいんですけどっ……!!
握り締めていたプレゼントされた服を、改めて目の前に広げてみる。
なんのことはない、ごくごく普通のパーカー。
鮮やかなオレンジ色をしたパーカーの真ん中には、深緑色の松マークが。
おそ松たちがよく着ているパーカーとまったく同じ、色違いの物だった。
六つ子たちがそれを着ているのを、お揃いでいいなぁなんて思ったことはなかったが、こうして同じ物をプレゼントされるとそれはまた意味が違ってくる。
「なんか……家族になったみたい」