第77章 【逆ハー卒業ルート】焼肉パーティ
あれだけあった肉のパックがほぼ空になり、他に買ってきた食材も底をつこうという頃、やっと最後の一人が箸を起き、ビールを一口煽る。
「っはー………満足だ……」
最後まで食べていたのはカラ松。
その直前まで十四松も一緒に食べていたのでほぼ同時だが、間違いなくこの二人が一番肉を食べただろう。
「ボクこんなに美味しい焼肉をお腹いっぱい食べたの初めてかも……」
床に仰向けに転がる十四松のお腹はパンパンに膨れていて、顔は幸福に包まれピンク色に染まっている。
ただ酔っているだけかもしれないが、十四松とカラ松はそこまでビールは飲んでいない。
そしてここで、今の今までナス子自身も存在を忘れてしまっていたとある物のことを思い出す。
ナス子は黙って席を立ち、それを取りに行くと、台所でなにやら作業をしてからそれを両手に持ち戻ってくる。
煌々と照らされた灯りを消すと、部屋が突然真っ暗になって驚く兄弟達。
「わっ、ちょ、なに? なんで電気消したの? なんも見えないんだけどっ」
「停電? そんなわけないよね」
チョロ松、トド松がそう口にすると、台所の入り口でオレンジ色の灯りが灯され、優しい光にナス子の表情と、手に持ったものが照らされる。
「は……ハッピーバースデー! おめでとう、みんなっ……こ、これ……作ったんだけど……お腹、もういっぱいかなっ……」
蝋燭の明かりで照らされたナス子の顔は、灯りのせいかそうではないのか、赤くなっていて、少しだけ居心地が悪そうにホールケーキを手に持つナス子の姿に、全員の視線が集中する。
「わっ、私にしては上手に出来たほうだとっ! 味見はしてないけどっ……」
そう言いながらみんなのほうへ歩いてきて、テーブルの空いた場所にホールケーキを置く。
「え……これ、ナス子姉が作ったの? 一人で?」