第76章 【R18】【逆ハー卒業ルート】主婦は偉大だ3 【4・6男】
「ちょっと! 聞いてるの一松兄さん!!」
「聞いてるよ……聞いてるけど……それ俺に言っても仕方ないことなんじゃない? おそ松兄さんが美味しいところ持っていくのは昔から変わらないし、なんだかんだでクソ松は次男だし。俺達……六つ子とはいえ、子供の頃からなんとなく序列ってものはあったような気はするよね」
「それはそうなんだけどぉ! 気に入らないんだよ! 気に入らないの!! だってアイツらもう童貞じゃないんだよ?! んで、ぼくらはまだ童貞っ! この差! わかる? 一刻も早くなくしたいんだけどっ!」
「……じゃあナス子のところ行って来れば? 多分ヤらせてくれるでしょ」
体育座りをした自分の膝に顎を乗せ、相変わらず床の猫の毛を一本ずつ拾いながら一箇所に集めている一松は、誰がどう見ても暗い。
暗すぎて一松の周りだけワントーン空気が濁っているような気さえする。キノコも生えてる。湿度が高まっている証拠だ。
それはさておき、一松の気のない返事に、高まっていたボルテージが下がっていくトド松。
「一松兄さんさぁ、なんでそんなに冷静……っていうか、無関心っていうのかな……悔しくないの? ナス子姉の処女だって当然のようにもっていかれちゃったんだよ? 一番最初にナス子姉のこと好きって自覚したのは自分だって、前に言ってたよね」
「……………」
ピタリと手を止め、一箇所に集まった猫の毛をじっと見つめる一松。
やっと反応らしい反応を見せた一松に、トド松は目を細めた。
「ホントはさ、ぼくらの誰よりも一番にナス子姉のこと抱きたかったんじゃないの? 一松兄さん」
「………そ、そんなこと、ない」
「いや思いっきりどもっちゃってるから。ぼくの言葉に狼狽えちゃってるのバレバレだから」
「っ……だって……今更だろ、そんなのっ……今更そんなこと言ったって、時間が巻戻るわけじゃないしっ……」
「ホント……時間が戻せればいいのになぁ……はぁ……」
トド松が黙り込むと、今度こそ部屋は静寂に包まれる。
体育座りの姿勢を崩さぬまま、一松はトド松に言われたことを心の内で反芻していた。
トド松の言う通りだった。