第74章 【逆ハー卒業ルート】主婦は偉大だ2
昨日は買い物だけでも渋っていたというのに一体目の前で何が起こっていると言うのだろう。
まさに開いた口が塞がらないと言う言葉は、今の光景にふさわしかった。
「ナス子? おい、ナス子?」
ヒラヒラと顔の前で手を振られて意識を確認される。
その動作にハッと我に返りおそ松の手を両手で掴んだナス子は訝し気に長男に疑いの眼差しを送った。
「い、一体……なんのつもりだおそ松……何を企んでいる!」
「……? ………はぁ━━━━━━!!?」
言われた側も一瞬ポカンとするのだが、心外だと言いたげに声を荒げ始めた。
「なんのつもりって普通に手伝ってるだけだけどぉ?! なんだよお前、俺がお前を手伝ったらおかしい訳? 俺だって……きっ、気遣うくらい出来るんだけどぉ」
なんとも気まずくて恥ずかしい空気が、似合わない二人の間に流れる。
その気遣うと言うのは、今朝のカラ松と同じで昨日の夜の出来事からナス子の身体を気遣っての事だ。
一番予想だにしていなかった人物が自ら家事をして気遣ってくれている。
しつこいようだが、あのおそ松が━━━━━だ。
その気持ちにドっと体の血がざわめく感じがして、ナス子はおそ松の低い声、息遣いを思い出してしまい途端緊張が湧き上がった。
「……そんな顔すんなってぇ、またシたくなんだろ? あ! 洗濯終わるまでここでシちゃう? なぁなぁ?」
「す、する訳ないじゃん! 馬鹿! あほ! ニート! 童て」
「はーい、ざぁんねん!! 俺もう童貞じゃないかんねぇぇえ、へへへー!」
得意そうにヤンチャな小学生のような顔をするおそ松が鼻の下を擦る。
今すぐ何かを投げつけたくて、投げても痛くも痒くもない、そこにあった綺麗なタオルをおそ松の顔にナス子は投げつけた。
「わっぷ!! なにすんだよぉ、いいだろ、俺ら二人で卒業したんだしさぁっ」
「いやあああああぁ、言わないでえぇえ! もう、ほんっと無理! 今はその会話無理っ、死ぬ、恥ずか死ぬからね!! 舌噛むからっ」