第11章 本日決戦日 チョロ松side
「あぁ、流されるな。体はデカくても身長はチビなんだから、ちゃんと立ってろよ」
離れてしまいそうなナス子の手首を掴み、また僕の隣に寄せる。
あれ、コイツこんなに小さかったかな?
元々身長はチビだと思ってたけど、久しぶりに手を持つと改めてそんなことを思う。
普通よりは手は大きい方だとか自慢してたけど、やっぱ男の僕と比べると小さいよなぁ。
一応女だもんね、ナス子姉も。
「体はデカいとか一言余計なんですけど、シコ松さん」
「誰がだゴルァ! あぁ?!」
「なはははは、ありがとチョロ松」
「ったく~」
会場に入るまで、仕方なくナス子の手を掴んでてやった。
僕ってほら、兄弟の中では一番マトモで常識人だしね?
相手がいくらコイツと言えど、困ってる人は助けてあげるのが常識ってもんだよね。
やっと会場に辿り着くと、僕らは目的の販売ブースが違うので昼飯までの間一度別行動をとる事にした。
ていうか、別に元々一緒に来たわけじゃないしね。
偶然出会っただけなんだけど、いつの間にか当たり前のように一緒に来たみたいになっちゃってる。
待ち合わせ場所を決め、僕らはそれぞれ戦闘体勢に入る。
「チョロ松、また後でね! 健闘を祈るっ」
ビシっと敬礼をするナス子姉に倣い、僕も同じ動作を返す。
「生きろよ・・・!」
「イグニッション・・・!」
いやなにそれ。イグニッション・・・?点火・・・?
意味わかんないんだけど。
何故今その単語をチョイスしたの?
ナス子姉はくるりと僕に背を向けると擬人化コーナーのブースに向かって行った。
どうやらアイツは今擬人化ジャンルにハマっているようだ。
そういえば、この間2人でスーパーに買出しに行った時も、駄菓子の擬人化の話をしたな。
「さて、僕も並ばないと。うん、時間もピッタリ!」
僕ってば完璧だ。
僕もアイツと同じように、目的のブースへと向かったのだった。