第71章 【逆ハールート】主婦は偉大だ
「あははは……こ、こんなっ、真剣に……ぷくくっ」
「………~~っ、笑いすぎだから!」
「ははは、ご、ごめん! いつも冗談では言ってくるけど……そ、そんな真剣な顔して言われるとは……おも、思わなくって……ふふっ」
長男長男といつも言ってはいるが、あの中で一番の構ってちゃんで甘えん坊。
そしてスキンシップも一番激しい男だと言うのに、その彼から自分に甘えて欲しいと言われてしまい、つい笑いと温かな感情が沸いてしまう。
「おそ松」
「なんだよ!」
横を向いたまま、やっと視線を上げてくれたおそ松とまた視線が合い、ナス子は相手の手を握りニっと笑った。
「拗ねてたの?」
「………うるせぇ、別に拗ねてねぇし!」
また視線は外されてしまったが、握った手をギュっと力を込めて握り返された事に、肯定の意味だと理解出来るとまたクスリと笑ってしまいそうになる。
「長男は大変だねぇ~?」
「長女で彼女のお前もなっ」
照れ臭さは残っているものの、言われた言葉に嬉しく思うナス子。
一度手を離してクルクルと転がり、おそ松の胸の中にしがみつく。
おそ松の心臓の音が早く聞こえて自分の心臓の音と重なる気がした。
「わ、私だって甘えたいって思う時はあるんだよ? でもなんか何でかわかんないけど上手く出来ないんだよねぇ」
埋めた胸から上を向き顔の距離が近づく。
おそ松は目を閉じて、その唇にナス子は吸い寄せられるように自分の唇を重ねた。
ギュっと抱き込まれてただ重ねただけのキスを何度も繰り返すと部屋の中に啄む音が響く。
「ん…」
「なんだよその顔ぉ、あぁ! でもこういう拗ねたような照れ顔は俺にしか見れないよな! ひひひーっ」
「うううう、煩いなぁ」
おそ松の目には複雑な顔で赤くなってしまっているナス子の顔が映っている。
彼の言う通り、普段扱いが違う相手だからこそなのか、この長男にだけは違う顔になってしまうのかもしれない。