第71章 【逆ハールート】主婦は偉大だ
「ん~、まぁ……このダラけた空間っていうか、シンとしてる感じも騒がしくなくていいかもねぇ~ふわぁ……眠ぃ」
ころんと方向を変えておそ松がいる方向に横向きで寝なおすと、同じくおそ松もナス子側に身体を向けてお互いに目が合う。
「こっち来れば?」
「はい?」
唐突に言われる言葉に一瞬何を言われているのかと思ってしまう。
真ん中には人一人が入れるくらいのスペースが空いていて多少の距離がある。
まっすぐ見つめられていると、さすがのナス子もおそ松相手にムズ痒くなってきてしまうのだが、やはり相手がおそ松だと素直な言葉がどうにも出てこない。
「なんで? 別にそんな距離空いてる訳じゃないしいいよこのままで~」
「良くない、俺がくっつきたいの!」
「じゃあおそ松がこっち来ればいいでしょ?」
口を尖らせて視線を外してしまうナス子に不服そうな顔をしたおそ松は自分からは行こうとはしない。
「それじゃ意味ないんだって、お前から来いよ」
「意味ないってどういう事? なんで私から行く必要が……」
このままではまたいつもの口論に変わっていくのではないかと思うのだが、一行に引く事をしない相手も同じく口を尖らせて拗ねた顔に変わる。
ナス子は訝し気に首を傾げるが、素直に近づこうとはしない。
相手はおそ松だしどうせ近寄ればセクハラじみた事をするのだろうと邪心してしまう。
いや、関係的にされてもおかしくないと言えばないのだが。
「お前さ、何で俺にだけいっっつも素直じゃないの? 他の奴にはまだ甘いって言うか、甘やかしてるって言うか……なんか俺だけ扱い違くね?!」
「え、そ、そう? かなぁ……」