第71章 【逆ハールート】主婦は偉大だ
「ナス子、後で話があるんだが……」
「話? うん、わかった」
いつものようにキスするのかと思ったが、カラ松は身体を離し微笑むとまた洗濯カゴを持ち二階のベランダに上がって行く。
それにナス子も続いて歩いて行った。
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「ブルースカイに手を伸ばす……俺」
「うん、何言ってるの?」
「中々これが気持ちいいんだ、ナス子もやってみるか? ……フッ」
「やらないし、なんの儀式なのか謎なんですけど?」
ベランダに上がり洗濯物を干している二人。
二階の部屋の中からそれを暇そうに見る兄弟達が、またカラ松が変な事をしているよと言う呆れた目をしている。
誰も手伝いに来ない辺りがさすが松野家ブラザーズだ。
とてもいい天気で、雲一つない。
青空も広がりポカポカ陽気と言うやつだ。
春になると変な人が増えると言うが、きっと目の前にいる青い男もその一人なのだろう。
いや、いつもカラ松は変だ。
ってこれ自分の恋人じゃん!と自分突っ込みも空しくその思いはカラ松の不明な言葉の数々により飛ばされていく。
「はぁ、普通にしてると無口な方なのに途端喋り出すとイタイよねぇカラ松は~」
「え、イタイ? イタイとは? 俺はナス子に危害など加えていない……ハッ、もしかしてさっき抱きしめた時にどこか痛めたんじゃっ」
「わ━━━━━━!! ちょっと、ここ外! 外だから身体をベタベタ触らないでよ、変態っっ」
「っっ!! す、スマン!!し、ししし心配でついっ」
イタイの言葉をまだ理解していない残念カラ松。
ナス子の言葉に勘違いをして、自分の行動がナス子の身体を傷つけてしまったのかと心配になり夢中で身体を触ってしまった。
やましい気持ちなど一つもなく触れられた為、ナス子も怒るに怒れない。
「まったく油断も隙もない……」
風が通りすぎナス子の髪を揺らす。
横顔から恋人が照れている様に気づいてしまうカラ松もまたイタイ言葉など忘れて俯いてしまう。
「す、すまない」
「べ、べつに」
黙々と沢山の洗濯物を干し終えてやっと一息つく。
この量を一人で干していたらどのくらいの時間がかかっただろうか。