第71章 【逆ハールート】主婦は偉大だ
「おおおおお、おおい、トドまぁつ! さわっ、触るのはいいんだけど今はダメっ、ダメだか……っら! 揉むな!」
「ふふ、ナス子姉……今洗い物してるし動けないよねぇ、顔真っ赤で可愛い~」
「いつでも動けますけどぉ? ちょっと肘を後ろに突いたり足踏んだりすれば簡単だし! ……い、嫌じゃないから退けてないだけだよ」
邪魔ではあるが何度も言うが触られるのは嫌ではない。
それに沢山我慢してくれていたと知っている以上、あまりコチラが頑なでいるといつか離れてしまうのではと言う不安もある。
早くそれを上手に信じられるようになれればいいのだが、元より培われた性格は中々治らない。
「へ、い、嫌じゃないの?! 今ぼく邪魔してるのに?!」
「自覚はあるんかい」
それでもトド松は抱きしめた相手から離れる事はなく、手を胸に重ねただけで他に何をしようとはしていない。
ナス子の言葉に驚き手が止まってしまったようである。
「嫌じゃないって言ってるでしょっ、 でも今は先にやる事あるし、もっとゆっくり出来る場所の方がいいって言うか……あ、あとで、ね?」
「~~~~~っ、はぁ。ナス子姉ってたまに反則みたいな事言うよね! わ、わかったよ。 後で絶対! ぜぇ~ったい触るからねっ、いっぱい触るからっ!! 早く片付けちゃおうっ」
ナス子よりもトド松の方が真っ赤になってしまい、一度恋人の身体から離れ洗われた皿をキチンと拭いて戻して行く。
ソワソワとナス子の洗い物をしてる様子を伺い大人しく待つ。
その視線からの雰囲気に思わずクスリと笑ってしまい、まるで子供がオヤツでも待っているようだなとナス子は感じた。
あんなに辛口でドライモンスターで透明になりきらない姿になれば心臓もなく、口を開けば人を貶めるような事ばかり言ってくるのに、素直になるとこれだと思うと面白い。
しかも二階に行こうとはせず待っている姿が可愛い。
やる事も少なくなりトド松は暇そうにスマホを弄りながらキッチンのテーブルに座っていた。