第71章 【逆ハールート】主婦は偉大だ
「いや~、これならナス子もいつでも嫁に来れるなぁ!」
唐突なおそ松の言葉に食べていたオニギリを変に吸い込んでしまい、途端呼吸が苦しくなり胸をドンドンと叩く。
「ブッ……ゲホゲホ、ご飯が変な気管に入ったっ、おおお茶! お茶ぁ!」
「フフ、嫁か……いつでも養われる準備は出来てるぜぇ」
「養われる準備じゃなくて働く事を優先的に考えて欲しいんだけど? ていうか誰が誰の嫁だって? ゲホっ……はぁ、苦しかった~」
「え、そんなん長男である俺の嫁に決まってるだろ? だって都内に一軒家だぜ? いいだろぉ?」
いけしゃあしゃあと言うおそ松を他の弟達が面白くなさそうに睨む。
勿論ナス子も、呆れ顔で溜息をついた。
「アンタもまずはニート卒業から初めてくれないかな?! ったく、朝からビックリさせないでよ、朝食作れたぐらいじゃまだまだ嫁になんて来れる訳ないでしょうが」
相も変わらずの言葉に慣れてはいるのだが、今日は一日奥さんのようだと思うと胸がギュっと、詰まったご飯が原因ではなく、トキメく意味で締め付けられるのを感じた。
「……まだまだ? って事はナス子はいつか嫁に来るつもりではいるって事だよね」
「は? 一松なにを……?」
「だってその言い方だとお嫁さんになってもいいって聞こえるよ姉さん!! ボクもいつでもウェルカームっ」
全くそんな思考は持っていなかったが、確かにあの言い回しは聞き方によってはそう聞こえてしまうかもしれない。
嫁どころかまだ彼女としても何の務めらしきものもしていないので居た堪れないし恥ずかしい。
「ま、まだまだまだま━━━━━━だ先の話でしょ!」
照れてしまったナス子がガツガツと朝食を頬張る様を、6人が微笑ましく温かな、その表情に突っ込みを入れたくなる程ほっこりとした顔でナス子を見つめている。
演出があるのなら周りに花でも飛んでいるかのようだ。