第71章 【逆ハールート】主婦は偉大だ
残されたナス子は、味噌汁を7人分の器に注ぎながら鼓動がドクドクと脈打つ。
昨晩の会話を思い出してしまい、思い切り両頬を両手で叩く。
「い……っっ! ━━━━━━━っし!!」
顔にくっきりと紅葉後がつくが、
これは恋人達へ向き合う覚悟と━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━自分への覚悟の一発であった。
勿論、家事全般含め、だ。
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気合の一発を自分に食らわせた後、緊張がバレないよう普通に振る舞い六人が集合する部屋に足を踏み込む。
中からギャーギャーと煩く喚く長男の声が聞こえた。
「あ、おそ松も十四松も起きてるじゃーん! ご飯出来たから起こしに行こうと思ってたんだよね、おはよー」
こちらの緊張など吹っ飛ばしてくれるかのようにおそ松が弟達に憤慨していたのだ。
十四松も満面の笑みでテーブルを囲っていた。
「なんだよお前ら! 皆して人の事グルグル巻きにしてさぁ!! 起きたらビックリしたんだけど!? ナス子も放置してないで助けろよなぁ~」
「……朝からセクハラして来ようとしてきたのは誰かなぁ」
「はぁ?! 俺なんもしてねぇし!! ただ夢の中ででっかいカピバラ抱いて寝てたような……」
「おいっ! そのカピバラに何でセクハラしようとしたのか謎なんだけど……」
「…………べ、別にカピバラに何をしようとか思ってないし、お前だって自分から━━━━━━━」
「━━━━━っっ?! ア、アンタ、やっぱり起きてたな!?」
「ピュ~ピュ~♪」
寝ていると思っていたおそ松はどうやら起きていたらしい。
どこから目が醒めていたのかはわからないが、自分が甘えた事がバレてしまっていたと思うと折角抑えようとした脈がまた早まってしまう。
全員にグルグル巻きにされても寝たふりを続けていたとは大したものだ。
「そ、それより!! お前朝食なんて作れたのぉ? 昨日の晩御飯はほぼ母さんが作ってたし、期待できないけどちゃんと食えるモン作ったんだろうな~?」
あからさまに話を逸らすおそ松ではあるが、全員のいる前でそんな事を言われ続けたら今度は自分が甘えた事に対して文句を言われると思い、起きた時の話題はそこで打ち切る。