第70章 【逆ハールート】花見 翌日のお泊り
「だからと言っておそ松兄さんばっかりいい所をとるのはズルイよね、僕らだってナス子の事抱きしめたいって思うんだけど?」
おそ松にきつく抱きしめられたまま、視線を上げると全員が距離を詰めている。
自分の発言で引かれると思い込んでいた事が逆に引かれる所か身体も気持ちすらも近づいてきてくれる兄弟達の姿を見てまたハラハラと涙が零れてしまう。
「けどもう俺らの事を童貞って馬鹿に出来ないよねぇ、ナス子姉さん? 俺らと同じだったんだからさぁ」
ミケ子を抱く一松がニヤつきながら片手で頭を撫でる。
いつも頭を撫でられるのが好きな一松から頭を撫でてもらうという行為に少し恥ずかしさがあるのだが、黙って目を瞑った。
「姉さん、大丈夫だよ! ボクらはダサくて残念でも姉さんの事大好きだからっ」
「ズビっ……十四松、お前はいつもいつも~……」
変わらずのやりとりだが、その十四松の言葉や笑顔に毒気を抜かれこちらも自然と笑顔になってしまう。
「チョロ松━━━━ほいっ、パス!」
「えっ」
「うわっっぷ」
珍しく独占欲も強く構って病も激しいおそ松がナス子を他の弟達へとポンっと差し出すと、体勢を崩して倒れそうになった所をチョロ松が受け止める。
「っと、危ないな! おそ松兄さん、一応頑丈で逞しいナス子と言えど打ちどころが悪かったらどうするんだよ、布団の上で良かったけどさ」
一瞬で抱きしめていた相手が変わり、同じ水色のパジャマの相手の腕に包まれて、またその温もりに心が安心する。
「…っ、あんたらは余計な一言つけないとダメな病気でも持ってる訳ぇ?!」
「お前だって素直じゃないんだしおあいこでしょ? はぁ、やっと触れた……」
「あれぇ? チョロ松兄さんもしかしてナス子姉にずっと触りたかったの? さっき外歩いてる時は手繋がなくてもいいとか言ってた癖に~」
「まーーーーったく、チョロ松もナス子に似て素直じゃねぇよなぁ! なはははははは」
「「煩いっ、馬鹿長男!」」