第70章 【逆ハールート】花見 翌日のお泊り
その深刻そうな発言に全員が息を飲み黙ってしまう。
「…………………て……です」
「「「「「「ん?」」」」」」
紡がれた言葉はあまりに小さく、隣に座っているおそ松やトド松も聞き取れない。
「私……実は、はっ、はははは、初めてなんです!!! 皆と同じで……」
ついに言ってしまったとギュっと目を瞑り正座するズボンを握りしめる。
六つ子が怖いと言うよりも、自分がこれを口にしてしまい、呆れられたり嫌われたりするのが怖かったナス子は目を開けられず誰かの言葉を待った。
ナス子の言葉に瞠目し、全員がつい押し黙ってしまう。
中々返って来ない恋人達の声に手が震えてしまい、半分泣きそうになるのだが、最早口に出してしまった言葉は訂正は出来ない。
「…………っ」
赤くなるどころかきっと今は真っ白な顔になっているだろう。
緊張で吐きそうになる自分をなんとか落ち着かせようと苦しくなる胸の呼吸を整えるように息を吸い込もうとするのだが、そのタイミングで温かな体温が冷めていく身体を温めてくれるかのように優しく包み込む。
「あのなぁ、そんな泣きそうに震えながら言わなくてもいいっての! ていうか俺らの仲だよ? だいたい察しはつくよね?!」
「おそ松……? お、怒ってない? 呆れてない?」
「も~~、ナス子姉ったらそんな事気にしてたのぉ? まぁ、ちょっとビックリはしたけどぼくらだって童貞なんだから一緒でしょ?」
おそ松に横から抱きしめられていたのだが、トド松がナス子の手を握り込む。
「じゃあ俺ら初めて同士って事だったんだね、やけに頑なだと思ったらそういう事……。っていうかそんなんで呆れてたらお前となんか付き合えないよね、もっと呆れる所いっぱいある訳だし」
「うぐ……一松、そこで皮肉言うかな……」
「姉さん、童貞だったの?! あ、違った! バージン!!」
「~~~っ、十四松!! ハッキリ言われるとなんか居た堪れないから言わないでっ」