第70章 【逆ハールート】花見 翌日のお泊り
「それにしても、なんかやっぱり変な感じだね、この時間のこの部屋に、姉さんがいるって」
「あーそれ俺も思った。なんかちょっとあれだよな、いつもいない人間が一人いるだけで、いつもとは違う部屋みたいになるよなー!」
「それが姉さんだからなおさらだよねっ! なんかぼくそれだけでタッティしそう!!」
十四松のその台詞に、普通に和やかだった部屋の空気が一瞬にして妙な雰囲気になる。
「あれ? みんなどうしたの? みんなもタッティ?!」
「じゅうしま~つ! ステイだ……今その話題には触れないでおこうっ……」
「なんで?」
「なんででもだ十四松っ」
「わかった」
カラ松がポケットから飴を取り出し十四松に渡すと、美味しそうにガリガリと噛んで食べてしまう二人のやり取りに、トド松が溜め息を漏らす。
「カラ松兄さんって何だかんだ十四松兄さんの扱い心得てるよねぇ、なんでだろ……ま、今は助かったけど」
部屋の空気に居た堪れなくなったナス子がわざと大声を出して立ち上がり、赤くなりそうな顔に必死に耐えながら拳を握り締めて六つ子全員を見渡す。
「あのねっ! 変なこと言い出したら私帰るからね?! 別に家近いんだから泊まらなくたっていいいいいし!!」
「語尾に動揺が漏れ出てるからねお前……」
「ナァ~ニを想像したのぉ? ヤダっ、ナス子のエッチ!」
「べっべべべべ別に動揺なんかしてないしっ! おそまぁつ! アンタこそ何を想像してんだコラ!!」
「んんんんん~~~」
「おいコルァ!! シコ松! その顔やめろぉっ!!」
とりあえず空気が元に戻ったことに内心安堵しつつも、やはりお泊りは早まったか……と、考えるが、ナス子も夜を通して皆と一緒にいられることはやはり嬉しくもあり、どこか気分が昂揚しているような気がするのは否めなかった。